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エネルギッシュなドイツの音楽シーン その2

▲ミュンヘンのライブハウス

前回は、ドイツのクラシック音楽の歴史を中心にお話しましたが、今回はポップス&ロックにスポットを当ててみたいと思います。

日本ではあまり知られていませんが、ドイツには『シュラガー(schlager)』と呼ばれる、アメリカのイージーリスニングのような伝統的なドイツ語ポップスのジャンルがあります。ほとんどがプロの作詞家、作曲家によって作られ、リズムもメロディもわかりやすく、内容も、恋の歌や人生の応援歌のようなものがほとんど……そう、日本で言えば昭和の時代の『歌謡曲』のようなものと思っていただくとわかりやすいかもしれませんね。

アーティストは圧倒的にドイツ人が多く、その他の国でも、スイス人、オーストリア人などのドイツ語圏が主流です。ただ、フランスのビッグシンガーであるミレイユ・マチューや、「世界の恋人」フリオ・イグレシアス(スペイン)、ナナ・ムスクーリ(ギリシャ)なども人気で、ドイツのシュラガー専門ラジオ局では、今でも、彼らの曲が頻繁に流れているそうです。

ドイツで一世を風靡したシュラガーの大御所アーティストとしては、オーストリア出身のウド・ユルゲンス(Udo Jurgens)が有名です。ヒット曲『夕映えの二人』(1967年)は、日本でもペドロ&カプリシャスが『別れの朝』のタイトルでカバーして大ヒットしました。


▲CD 『Udo Jurgens』 レーベル: Ariola Germany


しかし1960年後半から、シュラガーもだんだんアメリカやイギリスから入って来るロックの影響を受けた音楽に押され気味になり、前回でも紹介した『クラフトワーク(Kraftwerk)』を代表とするジャーマン・プログレ(クラウトロック)や、70年代80年大のヘヴィメタルムーブメントに乗って登場したジャーマンメタルといったジャンルが台頭してきます。

実際、今『知ってるドイツのミュージシャンは?』と聞かれて頭に浮かぶのは、このあたりのジャンルが多いのではないでしょうか? クラウトロックの、クラフトワーク、タンジェリン・ドリーム(Tangerine Dream)、ジャーマン・メタルのスコーピオンズ(Scorpions)、ハロウイン(Helloween)、エドガイ(EDGUY)などは、歌詞も英語で、ヨーロッパだけでなくアメリカでもヒットしています。日本に入ってくる洋楽のほとんどが、アメリカのチャートにランクインしたものを前提にしていることをよく現していますね。

それでは、ドイツのポップス&ロック界を代表するアーティストを紹介しておきましょう。


ネーナ(NENA)

ドイツの音楽界になんと30年も君臨するポップスの女王です。バンド「NENA」として発表した『99Red Balloon』(邦題「ロックバルーンは99」)は、1983年にドイツのチャートで20週連続1位に輝き、続いてアメリカのビルボードでも1位を獲得して世界的に大ヒット。ボーカルのネーナは日本にもファンが多く、84年に来日しています。
1987年にバンドは解散しましたが、現在もソロアーティストとして活躍中。


▲CD『Essential Nena 』 レーベル: Imports


ニナ・ハーゲン(Nina Hagen)


ネーナのようなポップスが流行る一方で、ドイツではパンクもかなり早くから市民権を得ています。ニナ・ハーゲンは1955年東ベルリン生まれ、デビューが、あのパンクの王者、イギリスのセックス・ピストルズと同じ1976年というベテラン中のベテランですが、ゴスロリ系のコスチュームや、悪魔のような声から妖精のような声、オペラ風からヨーデルまでこなす、たぐいまれなボーカル力で、60歳に手が届く現在も現役で頑張っています。
80年代には、フランスのデザイナーのジャン・ポール・ゴルチェがステージ衣装提供をするなど、そのファッションも含めて、マドンナやレディー・ガガの姉御的な存在と言えるでしょう。
メッセージ性の高い歌をドイツ語で歌っています。


ラムシュタイン(Rammstein)

1993年に結成1995年デビューのバンドで、彼らのスタイルは、メタルとインダストリアルとテクノをミックスした『タンツ・メタル(Tanz Metal)』と呼ばれています。曲の歌詞のほとんどがドイツ語であるにもかかわらず、ドイツ国外でも大成功しているバンドとして有名です。
火炎放射器から火柱が吹き荒れるステージの過激さから、かなりマニアックなイメージがありますが、上質なバラードナンバーも数多くあり、音楽的に、他のアーティストに多くの影響を与えているバンドと言えます。



レナ・マイヤー(Lena Mayer)


今、ドイツ国内で知らない人はいないというくらいのスーパースター。2010年にシングル『Satellite』を引っさげてドイツ代表としてユーロビジョン・ソング・コンテストに出場し、みごとに優勝!ドイツではその発表の翌日から1週間で10万を超えるダウンロード売り上げを達成し、一躍国民的アイドルになりました。
ネーナが80年代のアイドルなら、レナは正に今の時代のアイドル。ちょっとクセのあるボーカルが耳に残ります。

トキオ・ホテル(TOKIO HOTEL)

若手のバンドとして、今、ドイツだけでなく世界的に注目を集めているロック・バンドです。2005年にシングル『Durch Den Monsun』(英語タイトル『Monsoon』・日本語タイトル『モンスーンを越えて』)でメジャーデビュー。デビュー前からライブハウスなどで人気があったこともあり、デビューから9日でドイツのヒットチャートの1位を獲得しました。翌年にはドイツ最大の音楽の祭典『ECHO』で最優秀新人賞を獲得。続いてロンドンで開催されたWorld Music Awardsで多数の賞を獲得するなど、一大ムーブメントを引き起こしました。

デビューアルバム『トキオ・ホテル』は、20万枚売れれば大成功のドイツで、なんと60万枚を売り上げ、2008年にはアメリカデビューを果たしています。


▲CD+DVD『ダークサイド・オブ・ザ・サン~デラックス・エディション』 レーベル: ユニバーサル インターナショナル


さてさてこのバンドの魅力は、楽曲の良さだけでなく、何と言ってもボーカルのビル・カウリッツ(25歳)のビジュアル。その中性的な美しさだけでなく、趣向を凝らしたヘアスタイルやコスチュームでステージに立ち、「メンズガガ」の異名を取っています。また、ギターのトム・カウリッツはビルの双子の兄。こちらもストリートカジュアルのラフな衣装で寡黙にギターを弾く姿が人気で、アイドル性も抜群のバンドというわけです。バンド名が『トキオ・ホテル』とくれば、当然来日(2010年)も果たしており、2011年には東日本大震災のチャリティイベントのために、再来日しています。

頑なにドイツ語の歌詞にこだわるアーティスト、世界を舞台に活躍するアーティストなど様々ですが、電子音楽的要素や、歌のメッセージ性、メロディへのこだわりなど、どこかに必ずドイツ人ならではの魂が光っている。ドイツのポップス&ロックにそんな印象を受けるのは私だけでしょうか?
ぜひみなさんも聞いてみてください。


レポート・文 前川 みやこ(コラムニスト・ライフスタイルアドバイザー) 写真提供:OFFICE SHIBA Inc.

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